WINTER / SNOW REMOVAL DX / REGIONAL SOCIETY

冬の暮らしは、デジタルで
どこまで見えるようになったのか

除雪DXから考える地域社会DXの現在地

積雪センサー、除雪車GPS、GIS、住民向け公開情報。冬の現場では「作業を見えるようにするDX」が進んでいます。次に必要なのは、その情報を観測、判断、対応、振り返りへつなぎ、「今日、この地域で普通に暮らせるのか」を住民へ返す地域の運用です。

01 / SNOW雪の状態積雪深・道路カメラ
02 / WORK除雪の作業GPS・GNSS・作業軌跡
03 / LIFE今日、暮らせるか道路・交通・施設・防災
CIVIO'S THESIS現在の除雪DXは「作業の見える化」まで大きく進んでいます。次に必要なのは、積雪・除雪・道路・交通・防災の情報を住民の生活からつなぎ直し、現場の判断と次の冬の改善まで一つの運用として設計することです。

朝起きてカーテンを開けると、一晩で道路が雪に覆われています。

除雪車はもう来たでしょうか。いつもの道路は通れるでしょうか。バスは動いているでしょうか。学校や病院まで行けるでしょうか。

雪国で暮らしていれば、決して珍しくない冬の日常です。

当然ながら、デジタル技術で雪そのものをなくすことはできません。しかし現在では、「どこに雪が積もっているのか」「除雪車がどこを走ったのか」「どの地域で除雪が始まっているのか」といった情報は、デジタル技術を使って把握できるようになりつつあります。

一方で、情報が見えるようになったことと、冬の暮らしがそのまま分かるようになったことは同じではありません。道路の作業状況が分かっても、通学・通院・買い物・配送・公共交通まで含めて「今日はどう動けるのか」を判断するには、複数の情報をつなぐ必要があります。

今回は最新技術そのものではなく、冬の地域社会がどこまで「見えるようになったのか」、そして見えた情報をどう地域の判断へ返すのか、という視点から除雪DXの現在地を考えます。

1.雪は「道路」だけの問題ではありません

内閣府の令和8年版防災白書(2026年公表)では、降積雪によって毎年、交通障害や都市機能の麻痺、暴風雪、雪崩、屋根雪下ろし中の事故などが発生していることが示されています。

また、豪雪地帯については、豪雪地帯対策特別措置法と豪雪地帯対策基本計画に基づいて対策が行われ、地域の除排雪体制の整備や、除排雪の自動化・省力化に関する技術の導入なども政策対象となっています。

雪の影響は、道路維持管理の範囲だけには収まりません。道路の状態が変われば、路線バスやデマンド交通の運行、通院や通学、店舗への配送、施設の開閉、福祉サービスの訪問予定なども影響を受けます。平時には別々の業務に見える仕事が、冬には同じ気象条件と道路条件の上で動くことになります。

人口減少が続く雪国では、その雪に対応する「人」の問題も無視できません。北海道開発局が進める「i-Snow」も、除雪オペレーターの高齢化や人員確保を課題として掲げ、除雪作業の高度化・省力化を進めています。2022年度からは除雪機械の作業操作自動化について実働配備も始まり、2025年度までに全道13台が配備されたとされています。

このため冬のDXを考える際には、特定の機器やアプリを導入することよりも、状況を誰が把握し、何を優先し、どの手段で対応し、その結果を次の判断へどう返すかという地域の運用を見る必要があります。

2.「雪がどれだけ積もったか」は見えるようになってきました

除雪DXの中でも、比較的分かりやすいのが積雪状況のデジタル化です。北海道富良野市では、除雪出動を判断するため、従来、市職員や除雪協力業者が降雪予想日の深夜に現地を巡回していました。

そこで2022年度の実証では、Webカメラ、積雪深センサー、AI画像解析を組み合わせ、積雪状況を遠隔から把握し、除雪出動の判断と要請を支援する仕組みを構築しました。

この実証が示すのは、単にセンサーの数値を取れるようになったということではありません。従来の積雪深センサーは、設置した地点の積雪量、つまり「点」を測定することはできても、吹きだまりやわだちなど周囲の状態までは十分に把握できませんでした。そのため、Webカメラによる画像など別の情報を組み合わせ、現場の状況を補う必要がありました。

これまで「人が現場へ行かなければ分からなかった」情報の一部を、現場へ行かなくても確認できるようになったことが大きな変化です。

ただし、観測できる情報が増えれば、それだけで除雪判断が良くなるわけではありません。実務では「何を測るのか」と同時に、「その情報を何の判断に使うのか」「いつの情報なら有効なのか」「欠測や誤差をどう扱うのか」を決める必要があります。

01目的

何の判断を変えるために見るのか。

02更新

どの頻度で更新し、いつ古い情報になるのか。

03品質

欠測、誤差、見えない条件をどう示すのか。

04責任

誰が確認し、誰が対応を決めるのか。

人口が減少し、行政職員や除雪事業者の確保が難しくなっていく地域では、「巡回を完全になくす」ことより、限られた巡回をどこへ向けるか判断する材料を増やすことに大きな意味があります。

3.「除雪車がどこを走ったか」も見えるようになっています

さらに実用化が進んでいるのが、GPSやGNSSを利用した除雪車管理です。富良野市では、市販のGPS機能付き携帯端末を除雪車に搭載し、除排雪計画、市民からの要望、実際の作業実績などを組み合わせて分析する実証が行われました。

特別な専用端末ではなく、スマートフォン、管理用PC、クラウドを中心に構成している点も興味深いところです。位置情報を取得すること自体は、必ずしも大規模な設備投資から始める必要がないことを示しています。

岩見沢市では、さらに位置情報と市が保有するGISデータを組み合わせ、除排雪対策本部とオペレーターがリアルタイムに情報を共有する仕組みを検証しています。市民から寄せられた要望や注意箇所を地図上に表示すること、作業軌跡から熟練オペレーターの技術を継承すること、日報・月報作成を省力化することまで想定されています。

FROM LOCATION TO INFRASTRUCTURE 除雪車GPSは、単なる「車両の現在位置確認」ではありません。

道路、車両、市民要望、作業記録を、同じ場所情報を使ってつなぐための基盤になり始めています。

ここで重要になるのが、「観測された状態」「システムが示した候補」「現場責任者が行った判断」を分けて残すことです。位置情報や作業履歴は事実として記録できますが、「次にどこを優先するか」は生活への影響、道路の役割、作業安全、代替経路、現場経験などを踏まえた判断です。

この区別が残っていれば、後から「なぜこの場所を先に対応したのか」を振り返れます。逆に、システム上の表示と人の判断を一つにしてしまうと、改善の材料も説明責任も残りにくくなります。

4.住民自身が除雪状況を見る自治体も増えています

さらに一歩進んでいるのが、行政内部で把握している情報を住民にも公開する取組です。

新潟県阿賀野市では、2025年1月からGPSを利用した除雪管理システムを運用し、除雪車の作業進捗をリアルタイムで把握するとともに、住民がパソコンやスマートフォンから確認できる公開サイトを設けています。市はその目的を、除雪作業の効率化だけでなく「市民サービスの向上」や「持続可能な地域社会の実現」としています。

糸魚川市でも、除雪車に搭載したGPSから得られる稼働状況を住民向けに公開し、市公式LINEからもアクセスできるようにしています。札幌市では、生活道路の新雪除雪について、区ごとの出動情報をWebだけでなく公式LINEやテレビのデータ放送でも提供し、情報を10分間隔で更新しています。

ここまでを見ると、除雪DXはすでに「行政内部の効率化」だけの段階ではありません。住民が自分で冬の状況を確認するためのDXへ入り始めています。

一方、住民向け情報では、表示内容だけでなく「いつ更新された情報か」「どこまでを示しているか」「誤差や対象外の作業があるか」を明確にすることが重要です。行政内部では前提が共有されている情報でも、公開画面では利用者がその前提を知っているとは限りません。

また、Webやアプリだけで情報提供を完結させる必要もありません。LINE、テレビ、電話、窓口など複数の入口を残すことは、冬の情報を必要とする人をデジタル利用者だけに限定しないための運用でもあります。

5.しかし「除雪済み」と「通れる」は同じではありません

一方、現在の仕組みには明確な限界もあります。GPSで分かるのは、基本的には「除雪車がそこを通った」という作業記録です。しかし、その情報だけでは、「今、その道路を安全に通れるのか」までは判断できません。

道路脇に雪が積み上がり、幅員が狭くなっているかもしれません。交差点に大きな雪山ができ、左右の視界が遮られているかもしれません。車道は除雪されていても、歩道が埋まっているかもしれません。バス停までの数十メートルだけが歩きにくく、公共交通そのものは動いていても利用できない人がいるかもしれません。

つまり、「道路管理上の作業が完了したこと」と「生活者が目的地まで移動できること」の間には、いくつもの条件があります。自動車、徒歩、車いす、配送車両、路線バスでは必要な道路条件も異なります。

公開情報を提供している自治体自身も、この限界を示しています。糸魚川市は、GPSの精度誤差や不具合によって実際の除雪状況と異なる場合があるため、公開情報は参考として利用するよう案内しています。札幌市でも、公開しているのは生活道路の「新雪除雪」の出動情報であり、路面整正、拡幅除雪、運搬排雪など、すべての作業状況を公開しているわけではありません。

CURRENT POSITION 「作業の見える化」はかなり進みました。 一方で、「生活できる状態の見える化」までは到達していません。
QUIET INTERACTIVE

何が「見える」ようになったのか

視点を切り替えると、現在のデジタル化が得意な領域と、次に必要な情報が見えてきます。

「今日、この地域で普通に生活できるか」

ここは一つのデータだけでは判断できません。道路、交通、徒歩環境、学校・施設、物流、防災など、複数の情報を生活者の視点からつなぐ必要があります。

6.住民が必要とするのは、生活行動を判断するための情報です

住民が冬の朝に必要とする情報は、一つの行政業務だけでは完結しません。朝、自宅を出る人には「職場まで行けるか」、子どもを送り出す家庭には「学校まで安全に行けるか」、高齢者には「病院やスーパーまで移動できるか」、公共交通を利用する人には「バスが通常どおり動いているか」という判断材料が必要です。

さらに、冬の生活には物流も含まれます。本人が買い物へ行けなくても、店舗から商品が届くのか、配送が遅れているのか、注文内容を変更する必要があるのかによって生活への影響は変わります。人の移動と物の移動は責任や仕組みが異なりますが、道路や天候の影響を受けるという点では同じ地域条件の上にあります。

これらは、除雪車の位置だけでは分かりません。道路の状態、通行規制、公共交通、施設の開閉、配送・買い物支援、防災情報などを組み合わせて初めて、生活者の行動判断につながります。

だからといって、個人の移動履歴や健康情報を一つに集める必要はありません。例えば交通と配送が同時に道路の影響を受けている場合、共有すべきなのは個人の行動履歴ではなく、道路の状態、運行や配送の可否、代替手段、問い合わせ先など、判断に必要な情報です。

つまり住民に必要なのは、除雪という一つの行政業務の情報ではなく、「今日、この地域で普通に生活できるのか」を判断するための情報です。除雪DXの次の段階は、個々の作業情報を増やすことではなく、生活者の判断に必要な情報へ組み直すことにあります。

7.冬の情報を、一つの画面に集める

例えば、自治体が住民向けに提供する冬季情報画面を考えてみます。そこには、現在の積雪・降雪情報、主要道路の除雪状況、生活道路の作業状況、道路通行止め、路線バスやデマンド交通の運行状況、学校や公共施設の休止情報、防災情報などが、一つの地図や画面に集約されています。

住民が知りたいこと表示する情報
道路は通れるか除雪状況・通行規制・道路カメラ
バスは来るか運行・遅延・運休情報
雪はどれくらい降っているか積雪センサー・気象情報
買い物や配送は可能か店舗・配送・代替手段・変更案内
学校や施設は利用できるか開閉・休止・開始時刻の変更
困ったときどこへ連絡するか除雪・交通・福祉・防災等の窓口

ここで大切なのは、新しいセンサーを大量に設置することではありません。すでに自治体や事業者が持っている情報を、住民の生活を起点として再編集することです。

ただし、情報を一つの画面に集めれば、それだけで分かりやすくなるわけではありません。積雪、除雪、交通、防災、施設情報を同じ重さで並べれば、かえって判断しにくくなる可能性があります。必要なのは、現在地や時間帯、移動目的などに応じて、住民がその時に必要とする情報を優先して見せることです。

例えば画面の最初には、「現在の降雪や警報」「よく使う道路・交通の状況」「学校や公共施設の変更」といった、その日の行動判断に直結する情報を置き、除雪車の詳細な作業軌跡や過去の履歴は必要に応じて確認できる構成が考えられます。情報量を増やすことよりも、住民が次の行動を決める順番に合わせて情報を並べることが重要です。

また、情報には更新時刻と責任主体があります。道路情報は道路管理者、運行情報は交通事業者、施設情報は施設管理者が更新するなど、元の責任を曖昧にしたまま「統合画面」だけを作ると、誤りがあったときに修正できません。

データの統合と同じくらい、「何を先に見せ、何を補足情報にするか」「誰が更新するか」という情報の編集と運用が重要になります。

8.データをつなぐときの条件も整い始めています

これは除雪分野だけの話ではありません。国土交通省は地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS」において、事業者ごとに分断されているシステム、データ、業務を接続するための標準化を進めています。

2025年度には13テーマの標準ドキュメントを策定し、GTFS-JP v4など公共交通の運行情報に関する標準仕様も整備されました。目的の一つは、住民や観光客に分かりやすい交通情報を提供することです。

防災分野でも同じ方向が見えます。内閣府はSOBO-WEBを基盤として、防災情報を地理空間情報として集約し、国、地方公共団体、指定公共機関などが共有する「防災デジタルプラットフォーム」を進めています。

SYSTEMSそれぞれのシステムを増やすDATA必要なデータをつないで使う

ただし、共通基盤やデータ連携は、すべての情報を一つのデータベースへ集めることを意味しません。道路状態や除雪作業の情報、住民からの相談、交通予約、個人に関わる位置・連絡情報などは、目的も更新者も閲覧範囲も異なります。

FIELD現場運用

道路状態、除雪作業、施設、運行、配送。更新者と判断者を明確にします。

SUPPORT住民支援

相談、案内、代替手段。必要以上の個人情報を集めない設計にします。

SERVICE交通・施設

運行、予約、施設の開閉、代替手段。生活判断に必要な状態情報を連携します。

PERSONAL個人に関わる情報

相談、予約、位置・連絡情報など。目的、閲覧権限、保存期間を分けます。

冬の地域社会DXでは、全部を結合することよりも、目的に必要な接点だけをつくり、それぞれの情報の責任と境界を残すことが重要です。政策全体が「システムを増やす」から「データをつないで使う」方向へ進む中で、この考え方を雪国の冬にも持ち込めます。

9.「除雪DX」から「冬の地域社会DX」へ

現状を見る限り、除雪DXを構成する基礎的な技術はかなり揃っています。

01積雪・道路

積雪深センサーや道路カメラによって、雪の状況を遠隔から把握できます。

02車両・作業

GPSによって除雪車の位置や作業軌跡を取得できます。

03地理情報

GISによって道路や住民要望と重ね合わせることもできます。

04住民公開

住民自身が除雪状況を確認する仕組みも複数の自治体で運用されています。

次の課題は、これらを「機能一覧」として増やすことではなく、一つの地域運用へ接続することです。CIVIOでは、冬の運用を次の流れで捉えると整理しやすいと考えます。

01把握する

積雪、道路、作業、交通などの状態を確認します。

02判断する

優先順位、通常運用からの切替、代替手段を決めます。

03対応する

除雪、案内、運行変更、支援など実際の仕事へつなげます。

04残す

結果と理由を記録し、次の冬の改善へ返します。

事業化する場合も、最初から市全域を一つのシステムで変える必要はありません。既存サービスやデータ、担当部署、委託先を棚卸しし、対象地区・道路・施設・時間帯を絞って小さく試し、現場負荷と効果を確認してから予算と体制へ接続する方が現実的です。

国も、豪雪地帯安全確保緊急対策交付金により、持続可能な地域除雪体制や自動化・省力化技術の導入を支援しています。2026年3月改正の実施要綱では、地域安全克雪方針策定事業を10分の10以内・上限500万円、安全克雪事業を2分の1以内としており、対象経費にはシステム開発費なども含まれています。

一方、道路除雪そのものについては、雪寒法による支援や防災・安全交付金など別の制度が存在します。雪寒指定道路の除雪事業については、令和5年度から令和9年度までの五箇年計画で補助の特例措置として2/3が示されています。また、令和8年度当初予算では、防災・安全交付金として国費8,529億円が計上されています。

なお、この8,529億円は除雪専用の予算ではなく、地域の防災・減災、老朽化対策などを総合的に支援する交付金全体の国費です。除雪や冬季対策を事業化する際には、対象事業と制度要件を個別に確認する必要があります。

10.デジタルが担えること、担えないこと

ここには忘れてはいけない限界があります。除雪車にGPSを付けても、除雪車そのものが足りなければ雪は除けられません。積雪センサーがあっても、作業員がいなければ道路は開きません。高齢者宅の玄関前に雪が積もれば、最後は誰かが現場で雪を処理しなければなりません。

ドローンやAI画像解析も同じです。人が近づきにくい場所を確認したり、画像を整理したりする手段にはなりますが、機器を導入しただけで安全な運用が成立するわけではありません。気象、通信、機体管理、撮影範囲、データの保存、事故時の責任、そして撮影結果を誰が判断に使うのかまで決める必要があります。

AIや自動化は、情報整理や候補抽出を支援できます。しかし、どこを優先するかの基準をつくり、例外を扱い、住民へ説明し、最終的な対応を決める責任まで自動化できるわけではありません。

さらに、大雪は停電や通信障害を引き起こす可能性もあります。内閣府も防災DXを進める一方で、災害時にデジタル技術を利用するための非常用電源や非地上系ネットワークなど、電力・通信の確保が必要だとしています。

限られた人や除雪機械を、本当に必要な場所へ向けるために情報を整える。

冬のDXに求められるのは、現場を置き換えることではなく、限られた地域資源をより適切に動かすための判断を支えることです。そして、デジタルが使えないときに電話、現地確認、紙の連絡などへ切り替えられることも、冬の運用の一部として設計しておく必要があります。

11.冬のDXは「次の冬に何を残すか」まで考える

冬のDXは、雪が降っている間だけ画面が動けばよいものではありません。シーズンが終わった後に、何が起き、誰が判断し、どの対応が機能し、どこに負担が残ったのかを確認できなければ、翌年も同じところから考え直すことになります。

次の冬へ残すべきものは、機器そのものだけではありません。観測した情報、判断の理由、作業結果、住民からの相談、欠測や誤案内、現場のヒヤリハット、かかった費用などを、比較できる形で残すことが重要です。

1棚卸し

既存サービス、データ、契約、担当部署、委託先を確認します。

2可視化

どこで判断や作業が詰まっているのかを地図や記録から確認します。

3小規模実証

対象地域・期間・指標を絞り、効果と現場負荷を測ります。

4予算・体制化

継続条件、役割、調達、終了条件を整理して次年度へ接続します。

記録するときは、現場で受け取った原記録、構造化したデータ、集計結果、担当者の判断を分けておくと、後から検証しやすくなります。AIを要約や分類に使う場合も、AIがまとめた文章を原記録や公式判断と同じものとして扱わず、人が確認した経緯を残すことが必要です。

評価も「利用件数が増えた」「作業時間が短くなった」だけでは足りません。観測から判断までの時間、再確認や誤案内、代替手段の利用、現場や事業者の追加負担、事故・ヒヤリハット、運用費など、複数の視点で見ます。冬は毎年の気象条件が違うため、単純な前年比だけで成果を判断しないことも重要です。

そして、続けない判断も設計の一部です。安全条件が満たせない、現場負担が増えた、データ品質が低い、責任者が不在、費用が読めないといった場合には、縮小や中止を選べるようにします。DXを続けること自体ではなく、地域の判断が少しでも早く、説明しやすく、次の担当者へ引き継げるようになることを成果として考える必要があります。

12.冬の地域社会を「見えるようにする」

これまで雪国の冬は、多くの人の経験と調整によって支えられてきました。職員が道路を見に行き、除雪事業者へ電話し、住民は除雪車が来るのを待ち、交通事業者や配送事業者は道路状況を確認しながら仕事を続けます。

それぞれが持つ情報は存在していても、それらが一つにつながっているとは限りませんでした。現在のデジタル技術は、この状況を少しずつ変えています。積雪を遠隔で確認し、除雪車の作業を記録し、住民自身が進捗を見るところまでは、すでに複数の地域で実装されています。

次に必要なのは、さらに高性能な機械を導入することだけではありません。積雪、除雪、道路、交通、物流、施設、防災、行政サービス。それぞれの情報を住民の生活という視点から整理し、「今日、この地域でどう暮らせるのか」を分かる形で返すことです。

そして行政や事業者の側では、その画面の裏側に「把握する、判断する、対応する、振り返る」という運用を持つ必要があります。住民向けの見える化と、現場の意思決定は別々のものではありません。同じ情報が、住民には行動判断として、現場には優先順位として、シーズン後には改善の記録として返っていくことが理想です。

そのとき除雪DXは、単なる道路維持管理のデジタル化ではなくなります。

FROM SNOW REMOVAL DX TO WINTER REGIONAL SOCIETY DX 雪が降っても、できるだけ普段どおり暮らせる地域をつくり、その経験を次の冬へ残す「冬の地域社会DX」へ。

現在の技術で、その入口まではすでに来ています。次に問われるのは、「何をデジタル化するか」だけではありません。何の判断を変えるために情報を集め、誰が対応し、住民へどう見せ、何を次の冬へ残すのか。そこまで含めて設計することが、これからの冬のDXだと考えます。

主な一次資料

本稿では、以下の公的資料・自治体資料を参照しています。

※本稿は2026年9月15日時点の公表資料をもとに整理しています。制度・運用状況は更新される場合があるため、具体的な事業化にあたっては最新の公表資料をご確認ください。本文後半の運用モデル、小規模実証、情報の区分、次年度への記録等は、これらの資料と実務上の論点を踏まえたCIVIOの分析・提案です。